抜刀の!@半身動作研究会

半身動作研究会のワンテーマ講習会「3要素同時進行」に飛び入り参加した話。

ちょっと遅れて到着するとみなさん、2力の合成中であった。
■2力の合成(にりきのごうせい)
座りで肘を曲げた手を前に差しだし、相手に持ってもらう。
相手に手を持ってもらったまま、手を伸ばそうとする。
手を伸ばそうとする動作で生じている前後方向の力とは別に、
上下方向の力を発生させることによって、出所がわかりにくい力を発生させ、結果相手が崩れるというもの。
やり方は色々。

・手を伸ばす+お尻を落とす
・手を伸ばす+膝を伸ばす
・手を伸ばす+うなづく
・手を伸ばす+上を見る
・手を伸ばす+下を見る
・手を伸ばす+軸を立てる

上下方向の力を発生させるときに自分で斜め方向の力を出してはいけない。
あくまで結果として斜め方向の力が働くようにする。
そのためには、手を伸ばす動作を、単に手を伸ばす動作として独立させること。


■柾目返し
私が選ぶ出来そうで出来ない技、堂々の第一位がこれ(出来なさそうで出来ない技はいくらでもある)。
・座りで手を膝の上に載せる。
・受けは、正面に座った位置から、つっかい棒をするように相手の手を押さえる。
・取りは、軸を立てておき、指先から真っ直ぐ相手の方へ手を伸ばす。
・取りが手を伸ばし始めると相手が動き出し、後ろに倒れ始めるので結果として押さえられた手があがる。
らしいよ。

・肘で押してしまう
・上に向かう力が出てしまう
・肩で押してしまう
・寄りかかってしまう
・引いてしまう
・辰巳返しをやってしまう

という邪魔が入りやすい。
余りにもやりにくいので、私が手を前に動かしているところを邪魔するように途中から手を置いてもらったり、
上方向から押さえられると誘われやすいので、手を膝に置かずにやってみると2力が合成された場合の効果を感じることが出来た。
後で中島先生から説明があったが、昔は手を膝に置かずにやる形から稽古をやり始めたらしい。
図らずも自分の工夫で遡れたことで、何だか嬉しい気分になった。


■3要素同時
(立ち)手を伸ばす+横を向く+沈む
横を向いた時点で身体が捻れてしまってうまくいかない。
一度だけうまくいったが、その後うまくいかないのであまり好きじゃない。
相手が前にいるのに横を向いてしまうところにも抵抗があるし、、、と出来ない言い訳を考えておしまい。

(座り)斬り込む+左半身を開く+沈む(抜刀の動き)

中島先生『抜刀の体捌きと同じです。』

(おお!私がやっている抜刀の!!)

ようやく実感を持って抜刀の体捌きを想像できた(抜刀歴3週間ほどなのであっているかどうかは別)。
もともと体術として稽古していたので、それほどおかしなことはしていないはず。
座りで斬りあう形だが、手刀で相手の手刀を押さない。
私の相手をしてくれたAさんが、面白いことを言っていた。
斬り込んでくる動作の時点で、崩されるというのである。
確かに手刀同士が触れるか触れないかの時点でAさんはのけ反るように崩れ始めている。
よくよく聞いてみると、触れるか触れないかというより、触れる前に崩れていると言う。
私に相手を触れずに倒す不思議パワーがついてきたのか。
と、そんなわけではなくこの稽古の形に触れずに相手を崩す仕組みが隠されているのだ。
ここからは個人的な想像になるが、理由の1つとしては、この稽古の形が”刀で斬る”という動きであるからと言える。

刀で斬りかかられたらどうするか。

逃げられれば逃げるだろう。
逃げられないとわかれば受けるしかないが、
どうしたってのけ反るくらいの反応はしてしまう。

それがこの形で相手が触れる前からあるいは触れるか触れないかで崩れる仕組みなのだと思う。
ポイントは、相手の中心を取ることと手で押さないことだ。
自分の中心に相手が攻めてこなければ、触れずに崩れるというような反応は起こらない。
手で押すような動作で相手に向かっていった場合も同じ。

触れずに崩すというのは、とーっても不思議な感じがするが、(少なくとも私の理解の範囲では)原理はとても単純なものなのだ。
ただ、原理が単純であることと身につけるのが容易であることは全く違う。

この日も稽古も楽しかった。
中島先生はじめ、みなさまありがとうございました。


そう言えば稽古に向かう途中の地下鉄の駅でこんなことがあった。
大急ぎで乗り換えようとしていたのか、柱の陰から小柄な女性がけっこうなスピードで飛び出してきた。
私とぶつかるような距離では無かったが、女性が現れた瞬間、私はまるで塩田剛三の技を受けたがごとくつま先立ちで全身硬直したのだ。
今まで3年間の武術稽古中に、ここまで私を硬直させた人はいない。しかも触れずにだ。

あの急いで乗り換えをしようとしていた小柄な女性がとんでもない達人なわけではない。
不思議技の原理は意外に単純なところにあるのかも知れない。

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