井桁術理の発見@技で振り返る松聲館の歴史

甲章研究室企画「技で振り返る松聲館の歴史」の第3回に参加。
第1回からゆっくりと振り返っているので、この日『井桁術理』に辿り着くまでじっくり進んできた。

甲野先生が永野順一氏との稽古を通じて、井桁術理を発見されたという話は著書でも紹介されているし、甲野先生のお話でも聞いていた。
この日聞いた話はちょっと違う、稽古人にとってはとても参考にしたい話。

「ちょっと今のは捻れない方がこちらが崩れる感じがしますね。」
「さっきより、こっちのほうが良さそうです。」

このようなやりとりを甲野先生と永野氏はされていたようなのである(中島先生も後から聞いた話)。
そのうち、捻らないほうが良いんだということになって、井桁術理が誕生したとのこと。

このときの千代田稽古会が(参加者にとって)かなり衝撃的だったらしい。
前回まで『無拍子打ち』などの技を説明していた甲野先生が突然、これまでの技は無かったことにして『井桁』一色になってしまったのだ。
これが『井桁ショック』というものだったのかは聞いていないが、相当なショックを受けた人は少なくないはず。

■井桁前
「虎落(もがり)」
足を90度の角度以上に捻った位置に置き、
身体をもう捻れないところまで捻った状態で動く。
今とはまったく違うように思えるが、これ以上は捻らない(捻れない)という意味では捻らずに動く。
なるほどな解釈。
捻りっぱなしで動くのだから、捻りながら動くのとは違うだろう。


■柾目返し、正面の斬り
井桁発見直後はこの2つばかりやっていたそうな。
今思えばという話だったと思うが、『井桁』の動きとはフレーム構造の平行四辺形がつぶれる動きではなく、
多層構造の立方体が平行四辺形にずれながら動くというものなのだそう。
それにしても、稽古がこの2つだけとは地味である。
この時期に参加していなくて良かった(笑)
柾目返しでは手は前へ、軸が上へ。
正面の斬り、当初は手は何もせず、半身を差し込む正面の斬り飛ばし。身体の井桁構造。
そのうち手刀を立てて腕で崩す正面の斬りへ。こちらは腕の井桁構造。


■正中面、中心軸
井桁を考える上で中心という考え方は重要度を増してくる。
稽古の段階としては正面で相手と中心をあわせるところから。
このとき正中面という概念で自分の中心を左右に分けるような面を意識する。


■正中面を引っ込める
正中面は重要な概念だが、武術的には気配となってあらわれるもの。
理解出来たら今度はそれを消さねばならない。
正中面を引っ込めていって線になると、それが正中線。


■腕は囮
相手の中心を捉えた状態で、相手に触れると接触面の状態がどうであれ相手が崩れる。
相手が接触面に囚われてしまっていることが原因。


■胸鎖関節のずらし
「胸鎖関節のずらす」
ずれる訳は無いのですが、感覚としてはそのように使うということ。
胸をスッと楽にするのをきっかけに動くような感じか。



この日は稽古の後、同じ会場で連続して懇親会その後さらに飲食稽古会と続いた。
懇親会では股割りしながら話を聞いたり、飲食稽古会では恵比寿のように勝手な稽古や、”珍しい稽古”をしながら過ごした。

■珍しい稽古
『交差崩し』と呼ばれるクロスチョップみたいな形での正面の斬り。
片手で相手にふれる際に捻れがちな上半身を、触れない方の手でバランスを取ることで捻れないようにするという形。
詳しくは中島先生の著書『技ありの身体になる!』をご覧ください。

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