開始前@BULINK甲野善紀「最新の気づきと技と術理」


綾瀬で行われた甲野先生のセミナーに参加。

世話人のMさんから案内があり、甲野先生が「タクシー乗り間違え」「列車遅延」のダブルパンチで15分ほど遅刻するとの事。
「列車遅延」はわかるが、「タクシー乗り間違え」というのはどう言うことだろうか(笑)
と思っていたらそのMさんから「ちょっとたいさん、お願いしていい?」と言われた。
先生が来るまで時間をつないでくれないかということだ。
こんな日に限って中島先生がいないとは。。。
でも15分なら遊んでいればすぐだなと思ったのでお引き受けすることにした。
「ではちょっと遊びながら待ちましょう。」

力まないで動くというのを体験してもらうことにした。
『辰巳返し』で力まないで動く例を紹介した上で、皆さんには半身動作研究会の『正面押し』をやっていただく。
10名以上の参加者だったが、時間が限られているので次々に回ってこの稽古を紹介する。
最初に私がやって、次に皆さんにやっていただく。
「掴まれた手を前に出します。まずはふつうに押してみて下さい。」
ぐぐぐっと力が入る。
「掴まないので、小さく前へならえの構えから、前へならえをして下さい。」
手を掴まずにやってもらうので、当然余計な力は入らない。ひょいと手が伸びる。
「それで出来ていますので、それをやって下さい。」
で再び腕を掴む。
すぐ出来る人、ちょっと苦戦する人、色々いたが少なくとも余計な力を入れずに動くことが出来そうだというのは体験してもらえたと思う。

もう少し時間があったので、相手の後ろから両手で相手の両肩に触ると、相手が崩れてくる。というのをやった。
これは以前この綾瀬でシステマの北川さんに教わったやり方だ。
北川さんからは、「相手より真っ直ぐ立って触れば動く。」という説明を受けたのでそのまま説明に使わせていただいた。

ただこれは相対的なものなので、やってみるまでわからない。動く人もいるし、動かない人もいる。
動かない場合は、ちょっとおっかなびっくりで動きたくない人か、私よりもきちんと立っている人だ。
たいてい私がもっとふわっと触れると動いてくれる。
こちらの稽古が全員に回る前に甲野先生が登場。
何とか持ちこたえられたー!
かな?!

この日は突然の依頼で思わぬ大人数を相手に説明することになったが、私が質問に答えて技の説明をするときに意識していることがあるので今回はそれについて書こうと思う。
というわけで甲野先生の技の話は次まで出てきませんのでご了承下さい。

最近、「『辰巳返し』教えて下さい。」と言われることが多くなった。
甲野先生が以前講座の中で冗談混じりに「これができたら初段」といわれていたものだ。
・おさえられている事を気にしない
・背中に背負うように相手の体重を分散化する
・飛行機が離陸するように動く
甲野先生の説明を聞いただけではわからないと思うが、やり方は言われている通りで、出来るようになれば理解出来る。
そう言われると順序が逆じゃないかと思うが、説明が悪いのではなく体感を共有出来ていないのが原因だ。
泳いだことの無い人に、泳ぎの上手な人が言葉だけで泳ぎ方の説明をすれば同じようなことになるだろう。

ではどうすれば良いかと言うと、やってみるという事になる。
私が初心者の方の質問に答えるとき、意識しているのはここからの話。
どんなに言葉を尽くしてもそれが伝わるのは、出来てからなのだ。やった事がない初心者の方にとっては、わからない言葉が増えるだけだろう。
だからとりあえずやってもらう。
やってもらって、それで出来ていたらもう説明の必要はない。「それです!」と言えば良い。
出来ていなかったら、こちらで再現して受けて貰ったうえで改善するポイントを伝えてもう一度やってもらう。
やった上でさらに質問が出たら答えれば良い。
説明したくなるが、それはいったんおさえるのだ。

私が意識していることはもう1つある。
これは上達の速度に関する重要な要素でもあると言えるし、稽古のやる気に関わる要素とも言える。
・簡単に出来そうな雰囲気にする

自分がどんなに苦労して出来るようになった動きでも、今そう思っていないのであればことさら難しそうに説明する必要はない。
例えば『辰巳返し』も、動きの精度はあるにしても両手でおさえられた腕を上にあげるという形までであれば、説明しているその場で出来る人も多い。
ただ私はそれにもだいぶ期間がかかったが。

するとこんな説明になる。
・悪いところを言い過ぎない
・出来るレベルまで負荷を下げる
・再現して伝える
・改善点を伝える
・すぐにまたやってもらう
・良くなったらどう良くなったかを伝える
いいか悪いかはわからないが、経験的にこれで説明するとその場で変わる人が多い。
で、もちろんもっと改善できるので、最後にこういうのだ。
「いまので出来ていますが、もっと楽に動けると思います。」

講座などでこちらからある程度一方的に情報を発信する場合は、もう少し事前に説明をしたほうが良いとも思う。
稽古の目的は知っておいた方が上達が早いだろう。
って、講座なんて持っていませんが。

先日質問に答えますと書いてから、急激にそんな場面が増えたなぁ。
そう思うとそうなるのでしょうかね。
それとも甲野先生はこれを予感していたのか。

甲野先生の技の話に続く

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