柔道技研究稽古

甲野先生の千代田武術稽古会。
ここだけではないのだけれど、甲野先生の講座では先生の説明の邪魔にならない範囲で、参加者が自主的に稽古をすることが認められている。というより、むしろ推奨されている。
先生自ら「どうぞやってください。」と発言することもあるが、大抵の場合は最新の技の説明が次々に出てくるので参加した人はいつ練習したら良いのか(そもそも練習して良いのか)迷われるかも知れない。
結論だけ先に書くと、いつ練習しても構わない。
千代田の会場は、広く縦長という特徴もあって、奥の半分が甲野先生で手前の半分が参加者が自由に稽古する場所という暗黙の切り分けが出来ているので練習しやすい環境だ。
甲野先生の講座で、技の練習をする方法は別の機会に紹介することとしよう。



甲野先生の動きを見ていたのは序盤のみ、ほぼ全編が忍者の柔道有段者のIさんと、忍者ではないが同じく柔道ゆ有段者のKさんとの三船久蔵十段の記録映画を元にした柔道稽古になった。
どこにも甲野先生が出てきませんがご了承下さい(笑)

『空気投げ(その1)』
まだまだ他のやり方を開発する必要があることもあり、その2が出来る前だが今のやり方を『空気投げ(その1)』と呼ぶことにした。
振り返ってみるとほぼ『浮落』と同じ原理で投げている。見た目は『空気投げ』。
タイミングと相手の状態を感じて投げる。
これは一つのやり方として確定。

『浮落』
Iさんのリクエストでこちらも試す。Iさんは柔道の手技の形でやったことがあるが、形では受け側が自分で飛ぶので厳密には技を受ける機会がなかったとのこと。
この形では相手と組んだ状態で真後ろに三回下がる。三回目で相手との繋がりを保ったまま少しだけ右袖を引き出すように大きめに下がりながら体を沈める。
右袖を引き出す時に手で引いてはならない。
『送足払』の形と技に入るまでの感覚が似ている。

『送足払』
この日はやらなかったが、私がやる『送足払』は(受け側が)かなり飛ぶと、IさんがKさんから聞いたらしい。以前Kさんに受けていただいた時にぶわっと飛んでいたがあれは大袈裟に受けを取ったのではないということだ。
三船十段の『送足払』も相手が飛んでいたのでこれは良いこと。

その後も色々と練習した。特に『謙譲の美徳』を用いて相手をコントロール出来ないかと試したが、どれも有効なものであることがわかった。
それぞれの技には入りやすい相手の状態がある。『謙譲の美徳』の動きで一気にその状態に持っていこうというのだ。

『大外刈り』
相手を右隅に崩すのに『謙譲の美徳』を用いる。
瞬間的に伝わる作用に抵抗できずに崩れるので、そこで重心のかかった足を刈ると投げられる。

『大内刈り』
自分が相手に向かい、浴びせ倒すようにかける技だが、Kさんの提案で相手を手前に引き寄せて、結果として同じ形になるように『謙譲の美徳』で崩しをかけてみた。
この場合、謙譲の方向は斜め前上になる。
やってみると一気に相手が懐に飛び込んでくるので、そこに足を掛けて倒す。

『袖釣込腰』
受け慣れないとびっくりする。何かの技に入るところからの切り替えとか、その逆とか、組み合わせて使うと良さそうだ。

『大外落』
股関節の可動域が必要な技。組んだ状態の繋がりは変えずに、相手の右腰から腿裏を擦るように足を下ろす。
このとき相手の足は刈らない。

『大車』『膝車』『足車』
動画で見て検証してはっきりしてきた。
三船十段のそれは、腰にのせて足を掛けて投げる技ではない。体捌きで崩して投げる技。相手との位置関係により補助的に出す足の位置が変わる。

『大外車』
『大外刈り』を右足を浮かせてかわされた場合に連続して左足首にこちらの右足を掛けて投げる。

『支釣込足』
『○車』と同じ体捌きだが、足を掛ける分だけ思いきり体重をかけて崩せる形だ。梃子の原理を効かせやすい。
後でIさんに見せてもらったのが棟田選手の『支釣込足』。やばい。
http://www.youtube.com/watch?v=cPRzpeglON0

『跳腰』
形通りに練習。

『谷落』
捨て身技。Iさんが好きな技らしい。
急に来られるとびっくりする。体重が乗ってくるので来られてしまってから防ぐのは難しそうだ。

『背負投げ』
相手に背中を近付け過ぎず、少し離れたところで回転する。背を向けたところから、自分が後ろに下がるつもりで腕を引く。
受けを取ったIさんが言うには、自分が引っ張られたのか、投げる相手が近づいてきたのかわからないまま背負われている感じらしい。

『肩車を巴投げ』
投げ裏の形。
担ぎ上げられるところから後ろ重心で姿勢を真っ直ぐに保つ。自分から遠くにある荷物は重いという単純な理屈により、抱えあげられずに下りてきたところを『巴投げ』。後ろ重心は『屏風座り』で行う。
けっこう上手くいった。

投げ裏の形と言えば、『支釣込足を隅落(空気投げ)』というのがあった。『空気投げ』に入る動きのヒントがありそうだ。今度練習することにしよう。

『五つの形』
記録映画「柔道の真髄」に出てくる形。記憶を頼りにやってみた。
ちょっとよくわからない。

『ふわふわ受け』
投げに乗せられてからでは厳しい。
乗せられずに乗るためには三船十段の「押さば回れ、引かば斜めに。」に従って動く必要がある。
後手に回っては間に合わない。先に動いて自分で飛ぶのではない。
リラックスして相手の動きを感じて動く。

『謙譲の美徳』
組み合わずに手を突っ張って距離を取ろうとする相手を崩すのに使う。
やるとIさんがあっさり崩れるので、実はそんなに大変な形ではないのではと思い、普通に頑張ったら全く崩せる気がしませんでした。我ながら『謙譲の美徳』の威力に驚きました

『三人打ち込み』
打ち込みを受ける人の後ろにもう一人が付き、帯をもって座り、足裏で踵を押さえる。
この練習の意味は通常の打ち込みで持ち上がるはずの相手を、後ろから帯、踵を押さえることで持ち上げにくくするというもの。『謙譲の美徳』の威力を確かめようというわけだ。
私が打ち込んで、Iさんが受け、Kさんが座って押さえる形で試した。
袖、帯を持ち引き付ける動作を『謙譲の美徳』を使ってやってみたところ、座っているKさんのお尻が浮く。
私はKさんを立たせるくらいやらないといけないのかと思って、どうしようかと考えながらやっていたのだけれど、軽くやって後ろの人のお尻が浮けば、それは十分らしい。
バトンタッチしてKさんが打ち込みで私が座るとやはりお尻が浮く
Kさんは『謙譲の美徳』と言われる前から「自分と相手が入れ替わるように」という表現をされていたが、やはり効率よく自分のうごきを相手に伝えられているという事だろう。



我々の練習をみていた中国武術のUさんや、中島先生との講座も持たれている江東友の会主宰者のSさんからアドバイスをいただく。
Uさんからは座る事について、Sさんからは研究中の形の紹介をそれぞれ投げに繋がる形でアドバイスしていただいた。
本当に恵まれた環境で稽古させていただいていると感じた。
最近特に思うのは、稽古すればするほど稽古したい事が増えるというもの。大袈裟でなくずーっと稽古していたい。仕事している暇があったら稽古したいくらいだ(笑)

普段やらない稽古のせいかかなり疲労感もあったが、始めから終わりまでずーっと楽しかった。
みなさま、ありがとうございました!

甲野先生の技もしっかり受けましたよ。
長くなったのでこちらはまた今度書きます。

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