甲野善紀『ひもトレ』音楽家講座

白川さん主催による甲野善紀先生の音楽家講座に参加した。
場所は代官山の『晴れたら空に豆まいて』という、畳敷きのイベント空間。
この会場の講座に参加するのは二回目だが、独特の雰囲気があり、いつもと違った展開になる。
特に懇親会の雰囲気が気に入ってしまった。畳のせいだろう、参加者全体がリラックスした状態で臨めるのがよい。


この日は懇親会で音楽家の方がピアノを弾いてくれていたりして、音楽家講座とこの会場ならではの独特の雰囲気を楽しめた。
個人的には白川さんがひくピアノを聴けたのが嬉しかった。
うちの娘が最近ピアノに興味を持っているようなので、余計に惹かれたのかも知れないが、娘が音楽をやるなら白川さんのように楽しんでもらいたい。



この日はスペシャルゲストにバランストレーナーの小関さんが来られていた。
甲野先生から評判はうかがっていて気になっていたが、初めてご本人から紐トレの話を聞くことが出来た。


紐トレの効果は驚くような内容のものもあり、手軽さと効果のギャップが大きいと感じるものだった。
甲野先生もすっかり気に入ったようで、数年前のスポンジ以来だろう、積極的に取り入れようとされていた。
スポンジのときは、先生が技の探求ではなく道具探し路線に走るのを懸念していたが、今回の紐トレは道具が決まっているし、不自然に体を矯正する使い方もしないので私も安心して見ていられる(笑)


それにしても紐トレの効果は興味深い。
・走りのパフォーマンスが上がる。
・呼吸が深くなる。
・力強くなる。
・バランス力があがる。
紐を巻いただけでこれらの効果が得られると言われてもにわかには信じがたい。
しかし、今回の音楽家講座で相談にこられた方々の『音』が、体に紐を巻いただけで素人にもわかるほどに変化するのだから、効果は明らかだった。


今回は甲野先生からのアドバイスも紐を巻きなさいというものが多かったが、刀を当てて体の滞りをなくす(?)対応による変化も劇的なものだった。

紐はまだしも、刀による変化は毎回受けるわけにもいかないし、普段はどうすれば良いのか受講者は困ってしまうかもしれない。
確かにすぐには同じ状態を再現できるようにはならないだろうが、最近甲野先生が『虎ひしぎ』を手の形を変えずにできるようになったように、感覚を残しておけば紐や刀がなくても自分の体で再現できるようになるのだと思う。
そのためには一度でもいいので体がその状態になることが重要になってくる。楽な状態の存在を知ることで実現することへの現実味が増すのだ。
とは言え、知っているだけでは体に変化は起こりにくい。普段やるべきことは自分の体を感じて過ごすことだと考える。



甲野先生の新刊『出来ない理由は、その頑張りと努力にあった』が出たばかりで、さらにその新刊に私の名前が三回も登場するということもあってか、講座中に私が『謙譲の美徳』を紹介するという私にとってのサプライズもあったが、そのおかげもあって、その後の講習会では興味を持たれた方々から声をかけていただき、『謙譲の美徳』と『辰巳返し』のやり方をお伝えすることが出来た。
教え方もほぼ固まってきていて、今回はお伝えした全員の方にその場で出来るようになって貰い、ずいぶんと喜んでいただけた。
技として見せるにはやり方を変えずに動きを小さくしていく必要があるが、出来なかったことが出来るようになる面白さは十分味わっていただけたと思う。
また少しでも体の面白さに興味をもってもらえたら嬉しい限りだ。



講座の内容とは直接関係ないが、個人的なヒットは、浜松から参加されていたKさんの技への対応力だった。
Kさんは小柄な女性なのだが、そのつもりで技を加減してかけようものならいっさい通らない(笑)
ならばと気を取り直してかけてもなかなかかからない(笑)
いくつかの動きは説明通り技が通ったが、通ったと同時に安心した経験はこれまでになかった。
なんと甲野先生までもがKさんを崩したあとで「よし!」と言われていた。こんなこと常連の我々でも一度も耳にしたことがない。
これには笑ってしまった。



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