松聲館の技法レポート『外れる予測』

夜間飛行のメルマガ動画撮影に甲野先生の松聲館へ。

私にしてはしばらくぶりで、甲野先生とは先月の恵比寿以来の稽古だった。
といっても2週間ぶりくらいか。

その間、先生も色々と進展があったというので楽しみにしていた。
もちろんわたしも進展があったので、それが先生との稽古にどう影響するのか楽しみだった。

人が反応できない時間と動きの間に、ほんの少し『影抜き』で方向を変えて動く。
先月の気付きの腰を解放して動く。

技を受けると先生の説明の通り、前回とは違った質の動きになっていた。
しかしわたしもリラックスして受けられていて、大きく崩されることがない。
特に座りの稽古では半歩後退したところで、粘ることができていた。

すると先生が新しい試みをはじめて、座りの稽古を続けようと前に構えるも、触れる前からどうしようもなくやられそうな気配がする。
先生はそれを自分を内側に裏返すように動くと表現されていたが、稽古が進むにつれて後ろに吸い込まれる、上下では崖から崩れ落ちると言った表現に変わった。
これらの表現は以前にも聞いたことがある。

しかし、今回受けた技の質は以前受けたものとは明らかに違っていた。
『払えない突き』で、甲野先生はよく野球に例えて説明されている。
バッターがボールを打てるのは、ピッチャーやピッチングマシーンをみて動きを予測できているからで、もし全くボールの大きさに穴の空いた壁から突然ボールが発射されたら途端に打ちにくくなる。
突きも同様に、起こりが消えていつくるかわからない動きに対しては、予測できなくて払えなくなると言う。
今回受けた印象はそれよりもやりにくい。
野球に例えるなら、ピッチャーが二塁に牽制球を投げるのかと思ったら、突然ボールがこちら側に飛んでくるような状況だ。

逆の予測をさせられるので、こちらの構えが解かれてしまうのだ。
面白かったのが柔道の『小内刈』だった。
この技は相手に近づかないとかかりにくいので、相手が近づいてきたら組んだ腕で相手を突っ張って距離を保てば防ぐことが出来る。
それがどうしてもあっさりと小内刈にかかってしまうのだ。
組んだ感触から甲野先生は後ろに遠ざかるように感じてしまい、大丈夫だと油断したところ実際には前に近づいていて倒されてしまう。
なんとも不思議な、文字通り自分が無力になったような感覚で、どうしようもないとはこのことかと思い知らされているようだった。


この動きの今後の展開が楽しみでならない。

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