起倒流『体』@半身動作研究会


前回の続き

起倒流の型の稽古はOさんが甲野先生と稽古している当時やっていて、以前Oさんとロシア武術のKさん、中国武術のKさん、起倒流や合気道の研究をされているSさんらと研究していたそうな(今みるとずいぶん豪華なメンバーだ)。
当時はっきりしなかったという投げにいく側の動きが、本来どういう動きなのかというテーマで稽古する事になった。返し技の型だが、受け側の動きが質的に解明できていないという。
つまり、取りが何もしなかった場合、どのようにやられるのか(受けはどう動くつもりなのか)という事だ。
Oさんが言うには、型なので実際はそのような状態にはならないが、動きの質としては”何もしなければ崩される。”動きが求められるはずだというものである。
確かにその通りだろう。見た目の動きをなぞるだけでは、よく言われる形骸化そのものだ。
誰にも正解を教えてもらえないのだから、やるなら(あっているかどうかは別として)質も合わせて追及したい。

型の動きを無抵抗で受けてもらう形で色々と試してみた。
・『空気投げ』の体捌き
・その体捌きに沈みを加える
・繋がった状態でブン回す
・強引に腰投げに入る
どれもそれなりに動いてはくれるが相手の足が出て止められてしまう。
その後も3人で試したり、感想を言い合ったりしているうちに(重心移動で相手を連れてきて投げてしまえばどうか)と思い浮かんだ。
面白いものでこの発見はOさんもほぼ同時に浮かんでいたようだ。
Oさんに受けて貰うと、どうやらこれが当たり。
腕の力を使うことなく、投げに入る事が出来た。これは相手の方も身体が浮いてしまうので無抵抗では完全に投げられる形になった。投げる側も重心移動で連れてきた相手と繋がったまま動くだけなので、投げで感じやすい強引な状態にならない。
受け・取り合わせて動くと、受けが発見した動きで投げにいってもまさに型通り崩される。
有力候補だ。これはOさんにとっては長年の謎が解けたとも言える発見だったようで、いつものお返しではないが、お役に立てて良かった。
この"体"の取りは、相手の動きを感じてそれに逆らうことなく動くことで受けを崩すという。
これが私の動きを思わぬ方向に導くことになるのだけれど、その話の前に次の動画を紹介しておこう。
稽古後、動画を探してみたところ、何だか貴重っぽい動画が見つかった。
"Jigoro Kano"とある。

http://www.youtube.com/watch?v=ot5z7viZhqc

この動画の最初に出てくる型が"体"である。動画を見ると受け(動画の場合最初に技をかけるほう)の動きによる重心移動が行われているように見える。
検証した内容はそう外れてはいないようだ。
やたら移動距離が長いのは演武用の見栄えを考慮しての事だろうか。講道館と起倒流の違いだろうか。

■返し技、入る
相手が動かしたい方向に逆らわずに動く。
起倒流の型『体』に含まれている動きの質を頼りに、柔道の大外刈りに来たところに対して試す。
Sさん相手にやってみると、えらくうまく行く。
さらに教えてくれたOさんが驚いたように「どうやってるの?」と聞いてくる。
私は前に進んでSさんを崩していたのだけれど、Oさんのイメージだと相手は前に進んでくるのだから、それに逆らわなければ相手は後ろに流れるはずだというのだ。
言われてみればその通りなのだが、私の感覚としては相手は前に来る前に私を引きつけようとするので、それに逆らわなければ自分が前に入っていく事になるというもの。
実際には引きつける動作に入るか入らないかのところで私が動くので、「え?今どうやったの?」となるようだ。
Oさんが受けても「これは!」と思うタイミングで動けているようで、Sさんが敏感に受けているせいではないようだ。
後から気づいたが、これは最近甲野先生も取り上げ出した「間」という感覚に近いと思われる。
面白い感覚だ。
城間流や沖縄拳法の稽古で「間("入る"と言っていたが)」を意識した時はうまくいかなかったが、「間」ではなく相手の動きに逆らわないという意識で動いたところ、結果として「間」を取った動きになっていた。
"攻撃心の起こりを捉える"と言われてやっていた稽古では動けなかったのが、"相手に逆らわないで動く"と言われた稽古では動けたのだ。
こうなってようやく城間先生が言っていた「相手を思いやる心。」という意味が少しわかってくる。
相手をどうこうしようとして動くのではこの動きは発生しないだろう。
この動きが出来ると動きの幅が広がる。
相手に入っていければそのまま崩し、そのタイミングを逃した場合でも、やはり逆らわずに動くことで相手の動きを流して崩す。
この感覚で『空気投げ』が自在に繰り出せたらこれはけっこう面白いことになりそうだ。
私に激変とも言える変化のきっかけを与えてくれた"型"に込められた先人の技と想いはどれほどだったのか。
「起倒流」の型はまだ1本目だ。

■方条さんと
発見が多すぎて検証しきれないとツイッターで呟いていた方条さんと少しだけ稽古。
発見が多すぎて時間切れ(笑)
ツイートによるとその後も発見が続いているようなので楽しみだが、ちょっと板の道場でやるには危険そうな発見も見受けられるので今度会うときは覚悟しておこう。

■中島先生
骨で動く。
と言っても骨格にしたがって動くというものではなくて、足の踵あたりをコツンとするとその動きが相手に伝わって、、、
後は「相手が動くのでそれについていく。」というやつです。
この形は新しい。

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